インド半導体産業の最新動向レポート:後工程が先行し、前工程は遅延の壁に

インドビジネス
  1. ホーム
  2. インドビジネス
  3. インド半導体産業の最新動向レポート:後工程が先行し、前工程は遅延の壁に
インド半導体産業の最新動向レポートのアイキャッチ画像

インドの半導体産業は、2021年に政府が発表したインド半導体ミッション(ISM)を起点に、ここ数年で急速に具体化してきた。2026年時点の状況を見ると、パッケージング・検査を担う「後工程(OSAT)」の稼働開始が相次ぐ一方で、回路そのものを製造する「前工程(ファブ)」は当初計画から大きく遅れている。市場調査の観点で重要なのは、この産業を単一の指標で語るのではなく、後工程と前工程を分けて進捗を見極めることである。本稿では各社の稼働状況と政府支援策の執行状況を整理する。

後工程(組立・検査)は稼働開始が相次ぐ

グジャラート州サナンドでは、Micronが27.5億ドルを投じた後工程(OSAT)施設が2025年後半から量産を開始し、DRAM・NANDフラッシュメモリチップの組立・検査を世界市場向けに行っている。同じくサナンドではCG Powerの後工程施設も稼働を開始した。アッサム州ジャギロードでは、Tata Electronicsの半導体組立・検査施設が年内の稼働を見込んでおり、車載・産業向け半導体でのグローバル顧客獲得を狙う。さらにルネサスが出資する後工程工場も、2026年9月の商用生産開始が報じられている。これらはいずれも「組立・検査」工程であり、川下側から実績を積み上げている段階といえる。

前工程(ファブ)は遅延の壁に直面

一方、回路そのものを製造する前工程(ファブ)は依然として建設段階にある。Tataが台湾PSMCと技術協力してグジャラート州ドーレラで進める前工程工場は、28nm以上の成熟ノードを対象とし、当初は2026年の稼働を目指していたが、報道によれば2028年ごろまで遅延する見通しとされている。半導体産業を「組立・検査」と「製造そのもの」に分けて評価する必要があるのはこのためで、インドが自国で先端ロジックを製造できる段階に至るまでには、なお数年単位の時間を要するとみられる。

政府支援策の執行状況

インド半導体ミッション(ISM)は総額7,600億ルピー規模の予算枠を承認済みだが、2026年初頭時点での支給累計は1,800億ルピー程度にとどまっており、承認額に対する実際の支給はまだ4分の1に満たない。プロジェクトの建設進捗や生産開始のマイルストーンに応じて段階的に支給される仕組みのため、今後プロジェクトが稼働段階に入るにつれて支給ペースも上がっていくとみられるが、現時点では「予算は付いたが執行はこれから」という段階にあることは、投資判断において押さえておくべきポイントである。

インド半導体ミッション(ISM)の承認予算と支給累計額を比較した横棒グラフ

出所:インド半導体ミッション(ISM)関連報道を基にCasley India作成

レポートのまとめ

インド半導体産業は、Micron・Tata・CG Power・ルネサス系など複数社の後工程施設が相次ぎ稼働し始めた一方、前工程(ファブ)は当初計画から1年以上の遅延が伝えられており、政府支援策の執行も承認額の4分の1程度にとどまる。「稼働のニュース」だけを見ると華々しく映るが、工程別・執行状況別に実態を切り分けて見ることが、この産業を正しく評価するうえで欠かせない。

半導体関連での現地パートナー選定やサプライチェーン調査など、業界動向調査に基づく個別の検討については、当社まで気軽にご相談ください。

出所:本稿内の情報は、日刊工業新聞ニュースイッチ、マイナビTECH+、日経クロステックほか各種報道を基に構成。個別の意思決定にあたっては最新の一次情報の確認を推奨します。