インドUPI(統一決済インターフェース)市場の最新動向レポート:月間245億件で最高記録更新、PhonePe・Google Payの寡占に規制の視線

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最新インドのUPI市場調査レポート

インドの個人間送金・決済インフラとして定着したUPI(Unified Payments Interface)が、2026年も記録更新を続けている。全国決済公社(NPCI)が運営するこの仕組みは、銀行口座間の即時送金をスマートフォン一つで完結させる仕組みとして、都市部の富裕層から地方の零細商店まで急速に浸透してきた。単なる決済手段にとどまらず、消費データやマーケティング機会の宝庫としても注目度が高まっており、日本企業がインド市場調査を行う際にも避けて通れないテーマになりつつある。本稿では最新の取引データ、プラットフォーム間の競争構造、そして越境決済という新たな成長軸について整理する。

月間245億件、決済インフラとしての成熟

NPCIが公表したデータによれば、2026年8月のUPI取引件数は245.1億件に達し、7月の236.6億件から3.6%増加して過去最高を更新した。取引金額は29兆8,200億ルピーで、前年同月比では件数が22%、金額が20%それぞれ増加している。1日あたりの処理件数は7億9,100万件、金額にして9,620億5,000万ルピーに上り、もはやインドの個人消費・零細商店経済を支える基幹インフラと呼んで差し支えない規模になった。

この背景には、フィンテック市場全体の拡大がある。インドのフィンテック市場規模は2026年時点で約513億米ドルとされ、2031年には1,090億6,000万米ドルへ、年平均16.27%で成長すると見込まれている。QRコード決済の普及が都市部の小売店だけでなく、青果店や屋台といったインフォーマルセクターにまで及んでいることが、取引件数の底上げに直結している。

PhonePeとGoogle Payの寡占、30%上限規制の行方

個社別の状況を見ると、寡占構造がより鮮明になる。2026年8月の取引量シェアは、PhonePeが45.9%(月間112億5,000万件、取引額14兆2,600億ルピー)、Google Payが32.4%(同79億1,000万件)となり、この2社だけで全体の77.9%を占めた。3位に位置するNaviはシェアを4.4%まで伸ばしており、Paytmなど既存プレイヤーからの顧客移行が進んでいるとみられる。

この2強体制に一石を投じるのが、NPCIが2020年11月に提案した「特定アプリの取引量シェアを30%以内に制限する」規制である。当初の適用時期は複数回延期されてきたが、現行の猶予期限は2026年12月31日までとされ、2027年からは過去3か月間の移動平均でシェア30%を超えないことが求められる見通しだ。規制がそのまま実施されればPhonePeとGoogle Payは新規ユーザー獲得のペースを抑える必要に迫られ、Naviのような新興プレイヤーやPaytm、Amazon Payなどにシェアが分散する可能性がある。マーケティング調査の観点からは、決済アプリのシェア変動は消費者の購買データの取得チャネルにも直結するため、インドでの提携先選定においても注視すべき論点といえる。

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越境決済の急拡大、次の成長エンジンに

国内取引が成熟期に入る一方で、新たな成長ドライバーとして浮上しているのが越境決済である。2026年6月時点でUPIはアラブ首長国連邦、シンガポール、フランス、モーリシャス、ネパール、ブータン、カタール、スリランカ、カンボジア、ギリシャの10か国で利用可能となっており、同月にはカンボジアのACLEDA銀行が同国のQRコード決済規格「KHQR」とNPCIインターナショナルの提携によって9番目の受け入れ国に加わった。

件数自体はまだ国内取引に比べて小さいものの、伸び率は突出している。越境UPI取引は2024年度(FY24)の約3万7,000件から2025年度(FY25)には75万5,000件超へと、1年でおよそ20倍に拡大した。海外の加盟店開拓も進み、累計150万店舗以上がUPI決済に対応済みとされる。国・地域ごとの統合の形も様々で、ネパールでは決済アプリ「Fonepay」を通じてUPIが事実上の国内標準として定着し、シンガポールでは現地の「PayNow」と相互接続することで電話番号だけで送金が完結する。アラブ首長国連邦ではドバイやアブダビの小売店・飲食店・地下鉄など6万か所以上の加盟店網が構築されている。インド準備銀行(RBI)は2028〜29年までにUPIの対応国を20か国に拡大する目標を掲げており、現地の決済インフラと接続する形での輸出が今後も加速する見通しだ。日本企業にとっても、駐在員やインド人材の送金需要、越境ECの決済手段としてUPIの動向を把握しておく意味は大きい。

レポートのまとめ

インドのUPI市場は、月間245億件・29兆8,000億ルピーという規模に達し、単なる決済インフラを超えてインド経済のデジタル化そのものを映す指標になっている。一方で市場はPhonePeとGoogle Payの2社に77.9%が集中しており、2026年末に猶予期限を迎える30%上限規制の行方次第では、2027年以降に競争構造が大きく変わる可能性がある。さらに越境決済が前年比20倍という驚異的なペースで拡大しており、東南アジアや中東への展開はインド発のフィンテックが持つグローバルな影響力を示している。インドでの事業展開やパートナー選定を検討する企業にとって、決済データやアプリのシェア構造は消費者行動を読み解く上でも重要な手がかりとなる。

インド市場調査やマーケティングリサーチをご検討の際は、ぜひ弊社にご相談ください。