インドIT・BPM産業の最新動向レポート:輸出成長とグローバル拠点化の実像

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インドのIT・BPM産業は、NASSCOM(インドソフトウェア・サービス企業協会)の集計によれば2023年度(FY2023、2023年3月期)に総売上高が約2,450億ドルに達し、輸出売上高はそのうち約1,940億ドルを占める。同産業の輸出売上高はFY2019の1,360億ドルからFY2023の1,940億ドルへと5年間で4割超伸びており、コロナ禍によるリモートワーク移行やデジタル化投資の拡大を追い風に、単なる「安価な開発拠点」から企業のデジタル変革を担う中核パートナーへと役割を広げてきた。本稿ではこの産業の輸出成長の軌跡とセグメント構成、そして各社が進めるグローバル拠点(GCC)戦略の実像を、公表統計に基づいて整理する。

輸出売上高の5年推移

NASSCOM Strategic Reviewの各年版データを基に輸出売上高の推移を見ると、FY2019の1,360億ドルからFY2020は1,470億ドル、FY2021は1,500億ドルとコロナ禍でも底堅く推移し、FY2022には1,780億ドル、FY2023には1,940億ドルへと加速している。特にFY2021からFY2022にかけての伸びが大きく、パンデミックを機に世界各国の企業がクラウド移行・自動化・サイバーセキュリティ強化などのIT投資を前倒しで進めたことが、インド企業への発注拡大につながったと考えられる。もっとも近年は世界的な景気減速や欧米企業のIT予算見直しの影響で成長率自体は鈍化傾向にあり、単価上昇や高付加価値領域へのシフトが次の成長ドライバーとして注目されている。

インドIT・BPM産業の輸出売上高推移(FY2019〜FY2023)を示す棒グラフ

出所:NASSCOM Strategic Review(各年版)を基にCasley India作成

セグメント別に見る産業構造

FY2023の売上構成をセグメント別に見ると、ITサービスが52%と過半を占め、次いでソフトウェア製品・エンジニアリングR&Dサービスが29%、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)が12%、ハードウェアが7%となっている。ここで注目すべきは、単純なITサービスの外注受託に加えて、エンジニアリングR&D領域が全体の3割近くまで拡大している点である。自動車・航空宇宙・半導体設計といった領域での研究開発業務のインド移管が進んでおり、コスト効率だけでなく高度な技術人材の厚みが評価されての受注拡大とみられる。BPMについても、単純な定型業務処理からアナリティクスやカスタマーエクスペリエンス設計まで、付加価値の高い業務へのシフトが進行している。

インドIT・BPM産業のセグメント別売上構成比(FY2023)を示すドーナツ図

出所:NASSCOM Strategic Review 2023を基にCasley India算出

グローバル拠点(GCC)としての存在感拡大

近年の特徴的な動きとして、外資系企業が自社のIT・R&D・バックオフィス機能を担わせるために設立するGCC(グローバル・ケイパビリティ・センター)のインド集積が加速している。ベンガルール、ハイデラバード、プネ、チェンナイ、NCR(グルガオン・ノイダ)といった都市が主要拠点となっており、NASSCOMなど業界団体の調査では、GCCの数・雇用規模ともに拡大基調が続いていると報告されている。従来は外部委託先として発注していた業務を自社拠点として内製化する動きであり、インドが単なる「委託先」から「自社機能の一部」へと位置づけを変えつつあることを示している。日本企業にとっても、既存の外注委託契約だけでなく、自社拠点設立という選択肢を含めた比較検討が必要な局面に入っている。

レポートのまとめ

インドIT・BPM産業は、FY2019からFY2023にかけて輸出売上高が4割超伸びる一方、成長のけん引役はITサービスの単純受託からエンジニアリングR&Dや高付加価値BPMへと徐々にシフトしている。さらにGCC設立という形で外資系企業の自社拠点化が進んでおり、委託か内製化かという選択肢そのものが多様化している点が、この産業を検討するうえでの重要な視点となる。

委託先の選定や自社拠点設立の検討にあたっては、都市・人材層・競合状況など個別の状況把握が欠かせない。貴社の事業に即した市場調査や現地パートナー候補の選定について、当社まで気軽にご相談ください。

出所:本稿内の数値は、NASSCOM「Strategic Review」各年版に基づく。個別の意思決定にあたっては最新の一次情報の確認を推奨します。