
インドの太陽光発電市場が、導入ペースと制度の両面で大きな転換点を迎えている。インド政府の発表によれば、2026年上半期(1〜6月)の太陽光発電新規導入量は27GWに達し、前年同期の18GWから49%増加した。これは同期間に追加された発電容量全体(36GW)の実に76%を太陽光が占めた計算になる。さらに家庭向けの屋根置き太陽光は6.6GWの導入となり、前年同期比131%という突出した伸びを記録した。一方で2026年6月には太陽光パネルの主要部材であるセルの国産品調達が義務化され、これまで輸入に依存してきた市場構造そのものが変わりつつある。エネルギー政策の変化は日本企業の設備投資判断にも直結するテーマであり、インド市場調査の観点から現状を整理する意味は大きい。
太陽光導入ペースが過去最高水準に、再生可能エネルギー全体を牽引
インドの再生可能エネルギー全体の累積導入量は2026年6月末時点で288GWに達し、総発電設備容量の52%を占めるまでになった。その中でも太陽光は162GWと最大の構成要素であり、風力の57GWを大きく上回る。2026年上半期だけで27GWの太陽光が新たに導入されたペースは過去最高水準で、前年同期の18GWから49%の増加となった。
この結果、同期間にインド全体で追加された発電容量36GWのうち、太陽光が76%を占める形となった。インドは非化石燃料による発電設備容量を現在の156GWから2030年までに500GWへ拡大する国家目標を掲げており、太陽光はその達成に向けた中心的な役割を担っている。制度面でも、国家電力計画では今後10年で太陽光発電容量を7倍に拡大する方針が示されており、インフラ投資や部材供給の面で新たな事業機会が生まれる余地は大きい。
屋根置き太陽光が131%増、政府の普及策「PM Surya Ghar」は道半ば
今回のデータで特に目立つのが、家庭用の屋根置き太陽光の伸びだ。2026年上半期の屋根置き太陽光導入量は6.6GWとなり、前年同期比131%という高い成長率を記録した。この背景にあるのが、インド政府が2024年2月に開始した「PM Surya Ghar Muft Bijli Yojana(屋根置き太陽光無償電力計画)」だ。総額7502億1000万ルピー(約1兆4200億円)を投じ、2027年までに1000万世帯への屋根置き太陽光設置を目指す旗艦政策で、対象世帯には最大7万8000ルピーの補助金と、条件を満たせば月300単位までの無償電力が提供される。
2026年7月22日時点の政府発表では、約397万2000件のシステムが設置され、480万世帯以上が恩恵を受けている。これは1000万世帯という目標の半分に満たない水準であり、政策開始から2年以上が経過してもなお、設置件数の積み増しが課題として残っていることを示している。裏を返せば、目標達成に向けてはあと520万世帯規模の設置余地が残されており、施工・部材供給の両面で事業機会が続く可能性が高い。

国産セル調達義務化が変える調達構造、輸入依存モデルは転換点に
制度面での大きな変化が、2026年6月1日から施行された太陽光発電セルの国産品調達義務化だ。これまでインドの太陽光市場は、モジュール組み立ては国内で行いつつも、発電の中核部材であるセルの多くを中国などからの輸入に頼る構造が続いてきた。今回の義務化により、政府調達や補助金対象案件を中心に、認定を受けた国産セルメーカーからの調達が求められるようになる。
この転換は、短期的には国内セル生産能力の不足からコスト上昇や供給制約を招くリスクがある一方、中長期的にはインド国内でのセル・ウエハー製造投資を呼び込む契機になるとみられている。日系を含む海外の太陽光関連メーカーにとっても、単純な完成品輸出から、現地生産・現地調達網への参画へと戦略を見直す局面に差し掛かっているといえる。
レポートのまとめ
インドの太陽光発電市場は、上半期27GWという過去最高水準の導入ペース、131%増という屋根置き太陽光の急拡大、そして国産セル調達義務化という制度転換が同時に進行する局面にある。PM Surya Gharが目標の半分にも届いていない現状は、裏を返せば施工・機器供給の双方でなお大きな成長余地が残っていることを意味する。一方で国産化義務化は、輸入部材に依存してきたこれまでの事業モデルの見直しを迫るものであり、太陽光関連の製造業・エンジニアリング企業だけでなく、電力・不動産・住宅設備など裾野の広い業種にとっても影響を注視すべき変化だ。自社事業への具体的な影響を見極めたい場合は、インド市場調査の専門家にご相談ください。
出典:インド政府発表、PIB(Press Information Bureau)、GreentechLead「India Renewable Energy Market 2026」、SurgePV「PM Surya Ghar India 2026」