
インドの暗号資産市場が、規制の重しを抱えながらも世界最大級の存在感を保ち続けている。ブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)が発表した「2025年グローバル暗号資産普及指数」では、インドが3年連続で総合1位に輝き、しかも今回は個人向け取引額、取引所全体の受領額、DeFi(分散型金融)、機関投資家取引という4つの下位指標すべてで首位を独占した。151カ国を対象とする調査で全項目トップを独占した国は他になく、インド市場の裾野の広さを裏付ける結果となった。同社の分析では、2024年7月から2025年6月までの1年間でアジア太平洋地域の暗号資産受領額は1.4兆ドルから2.36兆ドルへと69%増加し、地域を牽引したのはインド、ベトナム、パキスタンの3カ国だったという。

30%課税・1%源泉徴収は据え置き、業界団体は不満
インド政府は2026年2月の予算案で、2026〜2027年度も暗号資産に対する既存の税制を維持する方針を確認した。具体的には、暗号資産売却益に一律30%の譲渡益課税を課し、さらに年間10万ルピーを超える取引には1%の源泉徴収税(TDS、所得税法194S条)を課すという2022年導入の枠組みがそのまま継続される。業界団体バーラト・ウェブ3協会(Bharat Web3 Association)は、この税率が国内取引所の流動性を奪い、取引が海外プラットフォームに流出する要因になっていると繰り返し指摘してきたが、政府は税収規律と消費者保護を優先する姿勢を崩していない。高い課税環境そのものは変わらないにもかかわらず、前述のチェイナリシス指数で普及率が世界一を維持している点は、インドの暗号資産需要が税制よりも根強い構造的要因に支えられていることを示唆している。
Z世代と地方都市が牽引する新しい担い手層
暗号資産デリバティブ取引所Pi42とベンチャーキャピタルのHashed Emergentが共同でまとめた「インドWeb3ランドスケープレポート」(2025年1月〜12月、約20万人のインドの先物トレーダーを分析)によると、新規トレーダーの61%が18〜25歳のZ世代で占められている。女性トレーダーの比率も前年比20%増加し、全体の約8人に1人を占めるまでになった。取引の内容も深化しており、1回あたりの平均取引額は2024年の約1,051ドルから直近では約1,960ドルへとほぼ倍増し、日次で取引を行うアクティブトレーダーの比率も約45%から約60%へ上昇した。地域別では東インドが全体の約32%を占めて最大の担い手層となり、アッサム州やアルナーチャル・プラデーシュ州など従来は金融取引の中心地とされてこなかった州が上位に浮上している。北インド・中央インドの取引量も2025年に倍増しており、大都市圏に偏らない裾野の拡大が続いていることがうかがえる。
レポートのまとめ
インドの暗号資産市場は、30%の譲渡益課税と1%のTDSという主要国でも際立って厳しい税制環境下にありながら、チェイナリシスの普及指数で3年連続の世界一を維持し、しかも4つの下位指標すべてで首位という結果を残した。その担い手は、都市部の富裕層や機関投資家だけでなく、18〜25歳のZ世代や東インド・北インドの地方都市在住者へと着実に広がっている。日本企業にとっては、規制動向を注視しつつも、若年層・地方都市を含めた需要構造の変化を前提にしたマーケティング戦略やパートナー選定が今後ますます重要になるだろう。インド市場での事業展開や実態把握をご検討の際は、現地に根ざした市場調査・マーケティングリサーチについて、お気軽にご相談ください。
出所:Chainalysis「The 2025 Global Crypto Adoption Index」(2025年9月)、Pi42 / Hashed Emergent「India Web3 Landscape Report」(2026年)、インド政府2026年度予算案の各種報道を基にCasley India作成