インド医薬品産業の最新動向レポート:輸出3年連続増、バイオ医薬品シフトで次のステージへ

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インドは長らく「世界の薬局」と称され、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の供給網を通じて世界のジェネリック医薬品の実に5分の1を担う存在へと成長してきた。2026年に入ってからのインド医薬品産業を見ると、その重心は単なる生産数量の拡大にとどまらず、輸出額の持続的な伸びと高付加価値のバイオ医薬品分野への転換という新たな局面に移りつつある。本稿では、インド商工省が公表した最新の貿易統計と2026-27年度予算で発表された政策をもとに、インド医薬品産業の実像を整理し、インド市場調査を通じてインドヘルスケア市場への参入を検討する企業が押さえておきたい論点をまとめる。

輸出3年連続の増勢と拡大する市場規模

インド商工省が2026年2月21日に公表したデータによれば、2024-25年度(FY25)の医薬品輸出額は前年度比9.4%増の304億ドル(2兆5,966億ルピー)に達した。FY24の278億ドルから着実に積み増した形であり、インド医薬品輸出振興評議会(Pharmexcil)の集計をもとにした業界推計では、FY26も311億ドル前後まで伸びる見通しが示されている。品目別では製剤・バイオ製品が輸出全体の75%(約229億ドル)を占めており、原薬(API)単体の輸出から完成品・バイオ製剤へと構成がシフトしている様子が数字にも表れている。

市場規模全体で見ても、調査会社Mordor Intelligenceの推計ではインド国内の医薬品市場は2026年に5兆2,000億ルピー(603億ドル)規模に達するとされる。インドブランド・エクイティ財団(IBEF)は、政府が掲げる目標として2030年までに1,200億〜1,300億ドル規模への拡大を紹介しており、インドは2019年時点で世界7位だった輸出数量シェアを、現在は世界3位まで引き上げている。後発医薬品の供給網としての地位は、数量・金額の両面で一段と強固になりつつある。

インド医薬品輸出額の推移(FY24-FY26)グラフ

出所:インド商工省発表(2026年2月21日)、Pharmexcil集計データをもとに作成

Biopharma SHAKTIが示す高付加価値化の方向性

2026-27年度予算で発表された「Biopharma SHAKTI」制度は、1,000億ルピー(約11.1億ドル)を投じ、バイオ医薬品・バイオシミラー(バイオ後続品)の国内製造基盤を強化する枠組みである。同制度の特徴は、動物実験に依存しない評価手法(Non-Animal Methodologies、NAMs)―オルガノイドやオルガン・オン・チップなど、ヒト由来細胞を用いてヒトの生体反応を再現する技術―の活用を掲げ、規制審査の高度化・臨床試験基盤の拡充・人材育成を一体で進める点にある。バイオシミラーは先行バイオ医薬品に対して30〜70%安価に供給できるとされ、非感染性疾患(NCDs)がインドの死亡原因の63%を占める現状を踏まえれば、高額な治療への現実的なアクセス手段としても位置づけられている。

この制度が示すのは、インドが「安価な後発品の供給地」から「高付加価値バイオ医薬品の開発・製造拠点」への移行を国家戦略として明確に打ち出した点である。委託製造(CDMO)や技術提携を軸に事業を検討する日本企業にとっては、規制環境や認可プロセスが今後数年で変化していく可能性が高く、参入時期の見極めが重要になる。

レポートのまとめ

インド医薬品産業は、輸出額の3年連続増加という定量的な実績と、Biopharma SHAKTIに代表される高付加価値化への政策転換という二つの軸で次のステージに入りつつある。ジェネリック医薬品の供給網としての強みを維持しながら、バイオ医薬品・バイオシミラーの分野で新たな競争環境が生まれることは、原薬メーカーから受託製造、臨床開発まで幅広い業態の日本企業にとって商機とリスクの両面を意味する。インド市場調査を通じて規制動向や現地パートナーの実態を把握したうえで、インドヘルスケア市場への参入タイミングや協業スキームを検討したい企業は、ぜひ一度ご相談ください。